NTTリストラ松山裁判 勝利が確定
最高裁がNTT西日本の上告を棄却
2月15日
 
<共同声明>
 
勝利確定を報告する原告(右から重見、高野、矢野の各氏)
 
 NTTリストラ松山裁判の高松高裁判決(昨年3月15日)を不服としてNTT西日本が最高裁に上告していましたが最高裁は2月15日裁判官全員一致の意見で、NTT西日本の上告を棄却しました。
 高松高裁は3月25日、2006年7月の再配転には不当な差別的意図が推認され配転命令権の濫用であり違法として、原告3人にそれぞれ200万円の慰謝料支払を命じました。
 NTTリストラ松山裁判は、一審で原告側の訴えが認められず、2008年2月に高松高裁に控訴して裁判がたたかわれてきました。高裁判決は、2002年の当初配転については一審判決を追認しましたが、当初配転から4年を経て行われた再配転について、「原告らが長年職務を通じて培った技能、能力を生かすことはできない上、60歳満了型社員が多数ないし大半を占める職場であることから、勤務意欲の高揚という点でも問題があった」とし、さらに、「長年勤務してきた松山に配置転換することは人事異動の選択肢として全く検討することなく、定年退職まで配転を継続する意図も強く疑われる」と原告らに対して行われた遠隔地配転を厳しく批判していました。また、一人の原告義父の介護に対しては、「育児介護休業法26条の趣旨からも問題がある」と指摘していました。
 最高裁の上告棄却は、賃金3割カットの「退職・再雇用」に従わなかった労働者への定年までの無期限配転を厳しく断罪したもので、極めて意義のあるものです。
 NTT西日本は、本判決を真摯に受け止め、不法な遠隔地配転を直ちに撤回するとともに、その根源となっている「50歳退職・賃下げ再雇用」制度を撤廃すべきです。

原告3名のコメント
  重見幸春さん
   現職の間に地元に戻り、そして、勝訴が確定したことは本当にうれしいことです。
 NTTの「退職・再雇用」リストラのテコとなっている遠隔地配転を裁判所が違法と認めた意義は本当に大きいと思います。これを機に、NTT東・西会社は、今も続けている見せしめ配転を止めるべきです。
 
矢野佳久さん
 『巨象を負かした』突然の連絡は、吉報だった。Faxを受け取り、現実に戻る間暫くの時間が必要だった。
 喜びが込み上げてきたのは、大阪へ赴任した八年の間にお世話になり共に会社の理不尽な仕打ちと闘った友の声を聞いた時だった。
 NTTに勝った。企業の横暴を裁判所は断罪したんだ。8年半の時は、会社から新たに知り合えた友人という一生の財産のプレゼントなのだと実感した。みんな有難う。
 
高野長蔵さん
 この判決は、60歳までの無期限配転を厳しく断罪したもので、全国各地で不当な配転に苦しめられている仲間のみなさんの力に、私たちがたたかうことで少しでも協力できたことを本当にうれしく思います。まだ地元へ戻るたたかいをしている仲間の地元復帰へ弾みがつきました。

<共同声明>
一、  2月15日、最高裁判所第三小法廷(田原睦夫裁判長)は、NTT西日本の上告棄却及び上告不受理を決定し、同社の違法配転を認めた高松高裁判決を確定させた。
二、  この裁判は、持株会社NTTが子会社NTT東・西日本に2002年5月から強行させた「50歳退職・賃下げ再雇用」という「構造改革」と称するリストラで、「退職」に応じなかった社員に対して強行した異職種・遠隔地配転の効力を争ってきた訴訟である。
 NTT東・西日本が行った「50歳退職・賃下げ再雇用」制度は、その業務のほとんどを新設子会社に外注化し、51歳以上の社員を「退職」させ、賃金を15%から30%切り下げて子会社に再雇用させるものである。そして、NTT西日本は、「退職」に応じなかった社員に対し、報復・見せしめを目的として異職種で遠隔地への配転を行なった。
 本件配転は、こうした不当な目的に基づき実施されたものであり、配転先での業務の適格性はおろか、経済的合理性も考慮することなく、「退職・再雇用」に応じなかった51歳以上の者だけを対象者としてわざわざ遠隔地へ配転したもので、業務上の必要性は全くなかった。それにもかかわらず強行された無期限の遠隔地配転は、本人ばかりでなく家族の人権を侵害し多くの不利益を与えた。
三、  一審の松山地裁は、原告重見、高野、矢野氏らの主張を一切認めず訴えを棄却したが、控訴審の高松高裁は、当初配転の無効を訴えた控訴は棄却したものの、2006年7月の再配転命令(名古屋から大阪2名、大阪内での再配転1名)について「配転命令権を濫用して命じられた違法な命令」と断じ、NTT西日本に対して、原告それぞれに200万円の慰謝料支払を命じる判決を下した。
 高裁判決はこの再配転について、「退職・再雇用を選択した社員に対する配慮を優先するあまり、60歳満了型を選択した社員に対しては、長年勤務し、かつ、本人が希望する勤務地(松山)には原則として戻さないことを前提とした、不当な差別的意図を推認することができる」と「退職」に応じなかった社員に対する嫌がらせ配転の意図を明確に指摘した。また、原告高野の義父の介護については、「育児介護休業法26条の趣旨からも問題がある」と指摘した。
四、  最高裁の上告棄却決定によって、「50歳退職・賃金30%カットの再雇用」というリストラ遂行のために行われた遠隔地配転の違法を認めた高松高裁判決が確定した。NTT東・西日本はこの確定判決を真摯に受け止め、ただちに「50歳退職・再雇用」リストラを中止し、不当な意図を持って遠隔地配転されている全ての配転者を直ちに地元に戻すべきである。私たちは、そのことを重ねて要求する。
五、  この画期的な裁判勝利が勝ち取られたのは、全労連をはじめ、多くの労働組合、民主団体、サポーターのみなさん、そして通信労組全組合員の大きなご支援・ご協力によるもので、改めてお礼を申し上げる。私たちはこの裁判勝利を確信にし、引き続き、NTTの「50歳退職・賃下げ再雇用」制度の廃止のために全力を尽くす決意である。
 
2011年2月17日
NTTリストラ松山裁判原告団
NTTリストラ松山裁判弁護団
全労連NTTリストラ闘争本部
家庭破壊・公共通信放棄の
NTTリストラに反対する労働者を支援する会
通信産業労働組合