NTT西日本の従業員ら35名が同社に対し、60歳で退職させられ、継続雇用されなかったのは高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下、「高年法」という。)9条1項に違反するとして、従業員としての地位の確認・賃金あるいは損害賠償を求めて訴えていた事件で、本日、大阪地方裁判所(中村哲裁判長)は、原告らの請求をいずれも棄却する不当判決を言い渡した。 判決は、高年法9条1項に定める雇用確保措置(65歳への定年延長、継続雇用制度、定年制の廃止)をとらなかったとしても、従業員が継続して雇用することを求めることはできないと述べ、私法的効力を否定した。しかし、このような解釈は、高年法が65歳までの雇用確保措置を努力義務から法的義務に高めた経緯を無視し、高年法に違反し従業員を継続して雇用しなかった事業主を無罪放免するものであり、到底容認できない。 判決は、NTT西日本が自社を60歳で定年退職する従業員は継続雇用していないにもかかわらず、自社を51歳で退職させて、20ないし30パーセント減の賃金水準で子会社に再雇用することに応じた従業員のみを当該子会社で60歳以降は契約社員として雇用する制度を設けていることをもって、高年法9条1項にただちに違反するとはいえないと判断した。しかしながら、このような解釈は、高年法9条1項2号が継続雇用制度について、「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」と定義している文理に明らかに反するものである。 しかも、判決は、NTT西日本の制度に対する原告らの批判に正面から応えず、同社の主張をそのまま拝借した、杜撰きわまりない論理を展開している。例えば、退職再雇用に応じて子会社で65歳まで稼働したとしても、そのままNTT西日本で60歳定年で退職した場合に比して、約159万円も収入が低くなっており、不合理な制度設計となっているにもかかわらず、「事業主が実情に応じて柔軟な措置をとることが許容されている」とか、「NTT労組の合意が得られている」とかの理由で、高年法9条1項の趣旨に反しないと述べている。しかし、5年もただ働きをさせられた上、約159万円も賃金を減額させられるような措置を講じたところで、高年齢者の安定した雇用の確保の促進…の措置を総合的に講じ、もって高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図る」という高年法1条の目的に沿う制度を設けたといえないことは明白である。 本判決は、NTT西日本の主張を無批判に受け入れ、事業主の都合で継続雇用しないことを容認するものであり、高年法を骨抜きにするものである。NTT西日本の違法・脱法行為を免罪する不当判決に対し、抗議の意を表明する。原告らは、本判決を不服として控訴し、大阪高裁にて勝利判決をかちとるために全力を尽くす決意である。 |
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