札幌高裁判決・一部勝訴
リストラ及び配転の業務上の必要性を
全て容認する不当判決 |
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声 明 |
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1. |
本日、札幌高等裁判所第3民事部(信濃孝一裁判長)は、NTTリストラ配転事件の判決(以下、本件判決という。)を言い渡し、苫小牧から東京へ配転された原告石黒について、年老いた両親を介護すべき強い事情があったとし、育児介護休業法第26条の趣旨に反する人事権の濫用があるとして賠償額を原審の100万円から150万円に増額した。これは、同じような事情を抱える労働者に対する企業の配転命令を厳しく制限するものであり、一定の評価をすることができる。 |
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2. |
しかしながら、本件判決は、原告石黒を含む5名全員について各配転に「業務上の必要性がないとはいえない」と会社側の主張を認め、原告石黒を除く4名(いずれも道内配転)については「(配転による不利益は)通常甘受すべき程度」を超えないとして、原審判決(50万円認容)を覆す不当な判断を行なった。 |
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3. |
本件は、2002(平成14)年5月、NTTグループ各社が「利益の最大化」を図る構造改革として全国規模で強行した「11万人リストラ」による強制配転事件である。会社は、人件費削減のために、51歳以上の労働者を対象にNTT東日本を一旦退職させ、新設子会社に30〜15%の賃金カットで再雇用するという前代未聞の計画をすすめ、97%の社員を退職に追い込んだ。一方で、会社の退職強要を拒否した少数の労働者には、本人の健康や家庭の事情を無視した「見せしめ・報復」の全国配転を強行し、「事実上の50歳定年制」の貫徹を企図した。 |
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4. |
原告らは、こうした不当な圧力に屈せず転籍に応じなかった労働者である。
原告らが、配転先で命じられた仕事は、住宅・商店街に対するチラシ配布や戸別勧誘、パソコン入力の単純作業、電話受けなどであり、遠距離・異職種配転までして行なわせる仕事では全くなかった。
今回の札幌高裁判決は、こうしたNTT東日本のリストラ・労務政策の意図や業務の実態に踏み込むことをせず、労働者の不利益を全く省みないものである。 |
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5. |
NTTリストラ配転に対しては、東京、札幌、静岡、名古屋、大阪、松山、福岡の7地裁に配転無効確認等を求める提訴が提起され、本年1月15日には大阪高裁で労働者の逆転勝訴判決が下されている。
原告団は、本件判決に到底承服できず、最高裁判所に上告するものである。原告団と弁護団は、今後、全国的な支援のもとでいっそう団結を固め、不当判決を跳ね返し、巨大企業の横暴を許さず労働者が人間らしく働ける職場を作るために、新たな決意にたって奮闘することを表明する。 |