最高裁上告棄却・声明
最高裁・NTTリストラ裁判上告棄却の不当決定
 
 2009年5月8日、最高裁判所第一小法廷(裁判長湧井紀夫)は、NTT11万人リストラを強行するために行われた異職種・遠隔地配転の効力を争っていた8人の労働者の上告等を全面的に棄却する不当な決定を行った。

声   明
 
1.  2009年5月8日、最高裁判所第一小法廷(裁判長湧井紀夫)は、NTT11万人リストラを強行するために行われた異職種・遠隔地配転の効力を争っていた8人の労働者の上告等を全面的に棄却する不当な決定を行った。
 NTT東西会社は、グループ利益の極大化を目的とするNTTリストラの中で、2002年から、100%出資の子会社(OS会社)を各県域に新設し、電話の業務を全面的に外注化した。そのうえで、50歳以上の社員約6万人に対し、賃金が3割下がるOS会社への転籍を強要した。これに応じなければ、それまでの経験や能力を全く生かせない異職種の職場に配置して成果主義を徹底し、家族とともに生活できない遠隔地配転を強制的に行うとの威迫を行ったのである。こうした威迫により50歳以上の97%が転籍に追いやられた。威迫に応じなかった社員には実際に不利益配転が強行された。
 
2.  上告人らはOS会社への転籍に応じなかったために、2002年に、北海道、宮城、山形、新潟、群馬から首都圏へ単身赴任または遠距離通勤を強いる配置転換を一方的に命じられた。上告人らの健康状態、家族事情、スキルや経験はすべて無視された。転籍に応じなかったことを理由とする報復的な不利益措置であることは明白だった。こうした非人間的措置が7年間にわたって続けられている。その理由は「リストラの円滑な遂行」の一点にあった。
 
3.  最高裁は、@転籍を拒否したが故の不利益措置であったこと、A他の50歳以上社員を転籍に追いやるための見せしめ配転だったこと、B業務上の合理性も必要性も全くないこと、C上告人及び家族らが人権侵害の配転により著しい不利益を被り続けていること、D国際人権規約に反する年齢差別であること、E労働者の家族的責任を保障するILO条約に反すること、これらのすべてに目をつぶってNTTの利益を一方的に擁護した東京地裁・高裁の判断をそのまま容認した。憲法や判例にしたがって大企業の横暴から労働者の基本的人権を守るという司法の使命は三たび放棄された。国際人権規約やILO条約を無視する態度が一審から最高裁まで貫かれた。こうした日本の裁判所の態度は国際社会からの厳しい批判を免れない。
 
4.  私たちは、企業の利益を最優先して、労働者に対する人権侵害をもいとわないNTTのリストラ手法を断じて認めることができない。今、日本では、景気悪化を口実とする労働者の使い捨てが横行し、大きな社会不安を惹起している。労働者が家族とともに安心して働けるルール作りが急務である。企業の横暴を容認する今回の最高裁決定は、国民の司法に対する期待と信頼を完全に裏切った。私たちは、この不当決定に屈することなく、NTTリストラの柱である「50歳定年制」の廃止、不当配転による人権侵害阻止、他のリストラ裁判勝利のために引き続き全力をあげる。
 
5.  東京裁判に対する大きなご支援に感謝するとともに、今全国で強行されている労働者の大量解雇を阻止し、すべての労働者が人間らしく働ける「労働のルール」を確立するために今後とも全力を尽くすものである。
 
2009年5月14日
NTTリストラ東京原告団
NTTリストラ東京弁護団
全労連NTTリストラ闘争本部
通信産業労働組合