提  言(機関紙『通信労組』第326号)
労働者の人間的営み復活へ、働くものの連帯こそ必要
2008年7月5日
 
 「『国民のもの』という言い方はやめていただきたい。今は株主のものです」。2006年3月22日、「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)のヒアリングでの当時NTT持株・和田社長の発言です。
 そして今年、NTT株主総会では、株主配当を1万1千円(2割2分)と決め、2007年度収入では「レガシー系とIP系及びソリューション・新分野等の比率がおおよそ半々」で、「2010年はレガシー系以外の新しい分野が3分の2、2012年度には4分の3」という見通しも示しました。「海外の売り上げ高は配当金収入を含めて2010年度には倍増の4千億円規模にもしたい」と。一方でNGNの目標は2012年までに2千万加入。とても国民全体に責任をもつネットワークではありません。
 NTT経営幹部に、「NTTの持つ情報通信設備・サービスは国民の共有財産」であるという認識はなく、ひたすら株主利益の確保に狂奔し、アメリカ式の新自由主義的経営にまい進しているのです。
 かつては、職場内で技術力や理解力の差があっても職場全体でフォローしあい、協力しあって相互に技術力を高めながら、公共通信の担い手としての誇りを持って働き続けられました。そこに労働者としての人間的営みの原点もありました。しかし、今では成果主義と雇用形態の複層化によって個々の技術力や理解力、売り上げ高の差が評価の対象であり雇用止めの危機です。協業体制による遅滞なきサービスの維持・運営と、技術やスキルの継承にとっての根本的矛盾を抱えています。
 しかし、この間の偽装請負や派遣法違反の告発、非正規雇用労働者自ら立ち上がることによって、与党でさえ労働者派遣に対する規制強化を打ち出さざるを得ず、確実に潮目は変わっています。「人間らしく扱え」という要求は、正規も非正規も、生産現場も求めており、その実現のために働くものの連帯こそ必要です。