NTT奥村過労死訴訟に対する
最高裁の上告不受理決定についての声明
 
 NTT奥村過労死裁判について、最高裁(9月18日)は、上告不受理を決定しました。損害賠償に対して、NTTの責任を軽減した判決を是認したことは、容認し得ないものです。なお、労働者の安全配慮義務違反は明確に断罪されています。奥村喜勝さんの02年当時の長期「研修」は、NTTが自ら定めた健康管理規程にも反し、宿泊出張をさせたことが要因となり、精神的・身体的ストレスが「ガラスの心臓」を壊し死に追いやりました。今後もNTTに対して同じ過ちを犯させないために、労働者が大事にされる職場環境を整えるよう強く求めていく決意です。ご支援ありがとうございました。

声   明
 
1.  本年9月18日、最高裁第2小法廷(今井功裁判長)は、NTT奥村過労死裁判について、故奥村喜勝さんのご遺族の上告受理申立に対し、不受理を決定した。
  これにより、2003年の提訴から6年にわたる裁判が終了した。
 
2.  2002年5月、NTTは、50歳以上の圧倒的多数の労働者を退職に追い込むために脅しの仕掛けを作った。その手法が「50歳退職・賃下げ再雇用」制度で、「会社選択」と称して「従前の仕事のまま地元で地域子会社に行くか」それとも「NTTに残って従前の仕事と全く違う高度な仕事で全国配転か」の二者択一の選択を迫るものであった。
当時、奥村喜勝さんは、通信労組旭川分会の分会長であり、このような会社のやり方を許すことはできないと悩み抜いてNTTに残る決断をした。奥村さんが受けた「研修」は、遠隔地への異職種配転を前提としたもので、研修内容は実際の仕事に役立たない「嫌がらせ」の研修といえるものであった。この長期間の「研修」による精神的・身体的ストレスが奥村さんの「ガラスの心臓」を壊し死に追いやった事実は明白であった。
 
3.  これまでの6年にわたる裁判の中で、奥村さんの死亡原因が「NTTリストラによる長期の宿泊を伴う研修による精神的、身体的ストレス」及び、「労働者に二者択一を迫ったリストラ強行によるストレス」にあったことが裁判所により認定され、よって、「ガラスの心臓」をもつ奥村さんを、NTTが自ら定めた健康管理規程に反して宿泊出張をさせたことが要因となって死亡したのであり、労働者の安全配慮義務違反は明白であって、NTTの不法行為責任は明確に断罪された。
 しかし、今年の1月30日、札幌高等裁判所は、差戻後の控訴審判決において、奥村さんがもともと心臓病の基礎疾患を抱えていたことなどを不当に重視するなどして、NTTの責任を死亡の原因のうち「30%が相当」とする不当判決を下したため、奥村さんらは、最高裁に対し、上告受理の申立を行っていたが、今回の不受理決定で、訴訟が終了することになった。
 最高裁が、NTTの責任を70%軽減した判決を是認したことは、容認し得ないものである。しかし、奥村さんの死亡がNTTの安全配慮義務違反によるものであることに関しては、何ら変わりはない。
 
4.  私たちは、2003年の提訴から6年にわたる裁判をたたかってきた遺族の痛苦の思いと奮闘に心を寄せてたたかい、今回一つの区切りを迎えた。
これまでの全国の皆さんのご支援に感謝するとともに、私たちは、今後もNTTに対して同じ過ちを犯させないために、一人一人の労働者が大事にされる職場環境を整えるよう強く求めていく決意である。
 
2009年9月25日
NTT奥村過労死訴訟弁護団
通信産業労働組合