NTTリストラ大阪判決
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声   明
 
 本日、大阪地方裁判所第5民事部(山田陽三裁判長)は、NTTリストラ配転事件について、原告23名のうち、原告神野、同市田、同村上に関する配転が違法であったとして、慰謝料の支払いを命じた。

 本件は、2002(平成14)年5月、NTTグループ各社が「利益の最大化」を図るために全国規模で強行した「11万人リストラ」が発端である。NTT各社は、人件費削減のために、51歳以上の高年齢労働者をターゲットにした。しかしながら、高齢者をねらい打ちにした賃金切り下げがみちのく銀行事件最高裁判決により否定されていることから、NTT各社は、こうした高年齢者を一旦退職させ、急造したアウトソーシング会社へ大幅な賃金ダウンで再雇用するという、実質は転籍を強要するスキームを採用し、企業外に放逐するという手法をとった。もちろん、転籍は当該労働者の個別の同意が必要であることから、会社はこの同意を取りつけるために、さまざまな圧力を加えた。

 原告らは、こうした圧力に抗して転籍に応じなかったものであるが、彼らが引き続き同じ業務に従事できるとなれば、泣く泣く転籍に応じた者たちに示しがつかないと考えたNTT西日本が、原告らを九州・四国から大阪へ、大阪から名古屋へと遠隔地に配転したのが本件配転である。それは、会社の労務政策に従わなかった者に対する見せしめ・報復以外の何物でもなかった。

 原告らは、定年間際になって初めて、単身赴任や新幹線通勤を強制された。本人が持病を抱えていようと、家族に病人や要介護老人がいようと、お構いなしだった。また、配転先で命じられた仕事は、およそ契約獲得見込みの乏しいシャッター商店街に対する光通信販売や単調なパソコン入力作業などといった、仕事とは名ばかりの、不合理きわまりないものであり、原告らの労働者としての誇りを大きく傷つけるものであった。

 これに対し、裁判所は、本件配転の業務上の必要性はあったとしながらも、大阪から名古屋に配転された原告らのうち3名、すなわち、老父母の介護の必要があった原告神野、糖尿病に罹患していた原告市田、奥さんが肺癌で手術したばかりであった原告村上について、会社はその事情を知っていたにもかかわらず本件配転を行い、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせたとして、慰謝料の支払いを命じたものである。

 本件では、この間の運動の高まりを受けて、会社が裁判対策として、本件結審間際である2006(平成18)年7月までに、原告後藤をのぞく原告22名を再配転により元の勤務地ないしその近隣勤務地に戻したため、これらの原告らについては配転無効確認請求を取り下げ、慰謝料請求だけをしていたという事情があった。そうだとしても、会社の主張する配転の業務上の必要性を安易に認め、高年齢者の遠隔地配転の不利益性を軽視しているという意味では不当判決というほかないが、それでもなお、裁判所としては、原告ら3名に対する本件配転の非人道性は容認できなかったということである。敗訴した原告後藤についても、会社に対し、「健康上の状況を確認し、その状況を十分に踏まえて、時宜にかなった、適切な配慮」を求めていることは、きわめて異例であり、会社は真摯にこれを受け止めるべきである。

 本件配転がなされた2002(平成14)年9月以降、東京、札幌、静岡、名古屋、大阪、松山、福岡の7地裁に配転無効確認等を求める訴訟が提起され、たたかわれてきた(その後、併合、和解により、4地裁と1高裁で係争)。

 本日の判決は、こうした一連の訴訟において、昨年9月の札幌地裁判決に続いて、原告らの一部とはいえ、その配転命令が違法とされたものである。
 NTT各社は、本件リストラが裁判所によって厳しく断罪されたことを重く受けとめ、公共性を守るべき原点に戻って、本日の判決に控訴することなく、早急に、誠意をもって団体交渉の場で解決するよう求めるものである。
2007(平成19)年3月28日
NTTリストラ大阪訴訟原告団
NTTリストラ大阪訴訟弁護団
全労連NTTリストラ闘争本部
NTTリストラ事件大阪支援共闘会議
通信産業労働組合