携帯電話の電磁波被曝問題について

2012年9月1日(11/13修正v13) 

通信労組 第37回定期全国大会付属資料

 

  携帯電話は、現在、日本国内で1億3千万台、世界で60億台以上もあり、通信手段としてだけではなく、インターネット情報端末として、子どもも大人も誰でも手放せない存在となっています。TVドラマなどでも耳に密着して使用するシーンが数多く見られ、当たり前となっています。しかし、電磁波による被曝の問題はないのでしょうか。

 

1、国際がん研究機関(IARC)が電磁波被曝リスクを発表

  携帯電話の電磁波被曝の影響について、2011年5月31日、WHO(世界保健機関)の下部組織であるIARCは、携帯電話から放射される電磁波ががんを引き起こす可能性があり、発がん性リスクをランク分けする5区分の中で、「携帯電話の使用」を、グループ2B「ヒトに対する発がん性の可能性がある」のカテゴリーに入れたと発表しました(詳細はプレスリリース参照)。

  5月31日のIARCプレスリリースによれば「過去の携帯電話の使用に関わる研究(2004年に遡る)では、使用頻度が最も高い利用者(報告平均:10年以上にわたって1日30分)は、グリオーマ(悪性の脳腫瘍)に罹る危険性が40%も高いことが明らかにされた」としています。

  以前より発がん性が問題視されていましたが、総務省や携帯電話会社等が問題ないとしている状況のもとで、IARCが「発がん性の可能性がある」と発表したことは大きな重みがあります。

  ※IARCプレスリリース翻訳

  http://tcwu.org/syutyo/2012/pr208yaku.html

  ※IARCの発がん性区分について

  グループ 1:発癌性がある。

      2A:発がん性がおそらくある。

          2B:発がん性の可能性がある。

           3:発がん性があるものとして分類できない。

           4:発がん性がほとんどない。

  Complete List of Agents evaluated and their classification

  http://monographs.iarc.fr/ENG/Classification/index.php

 

2、IARCの発表に対する総務省、NTTドコモの対応

  総務省、ドコモは、IARCの発表を受けて、2011年秋に電磁波の影響についてホームページに掲載していますが、総務省は「人体への影響はみとめられない」、ドコモは「安心してご利用いただけます」としています。

   総務省http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/ele/body/emf_pamphlet.pdf

   ドコモhttp://www.nttdocomo.co.jp/corporate/csr/safety/radio/safe.html

  しかし、国民のいのち・健康を第一に考慮すべき国や社会的責任のある企業が取るべきことは、早急に具体的予防対策を講ずることです。

 

3、携帯電話とは

   携帯電話とは、電磁波を利用して携帯電話基地局を経由して、固定電話や携帯電話と通話を行う無線端末機のことです。

(1)携帯電話の周波数帯

 ■ 800MHz帯(NTTドコモ、au等)

 ■ 1.5GHz帯(au等)

 ■ 2GHz帯(au等)

(2)携帯電話の空中線電力(電波出力)

  携帯電話の周波数帯別空中線電力は、

  ■ 800MHz0.8GHz)帯 → 800mW

  ■ 1.5GHz帯      → 800mW

  ■ 2GHz帯      → 200mW (PHSは10mW

 

4、携帯電話の人体への影響

  IARCが発表している通りですが、携帯電話を耳に当てて使用すると、電磁波による共振・頭部の球体としての作用、水分に吸収されやすい作用により頭部に電磁波が吸収されホットスポットとなり、脳腫瘍などに罹る危険性が高まるということです。特に水分含有率の高い子ども・青少年への影響が高いといわれています。ホットスポット以外にも電磁波被曝による有害性が懸念されていますが解明されていません。

 

5、電磁波被曝対策

  どうすれば電磁波被曝を少なくすることができるのでしょうか。

(1)なるべく携帯電話を持たない、使用しない、特に子どもや妊娠中の方には使用させない。

(2)携帯電話を使用する場合は下記事項に注意する。

     ※ピッツバーグ大学がん研究所の「10の予防的手段」を参照(市民科学22号より)

       http://www.shiminkagaku.org/01/shiminkagaku/22/csij-journal-022-cellphone.pdf

 @SAR値(比吸収率)の低い携帯電話を利用する。または電波出力の弱いPHSを利用する。

 例えば携帯電話は、PHS(10mW、PHS基地局20〜500mW)と比べると、電磁波の強さは周波数の2乗、出力に比例しますから携帯0.8GHzとPHS1.9GHzの比較で<(0.8GHzの2乗)/(1.9GHzの2乗)>×(800mW/10mW=14.18

   つまり、約14倍、携帯の方が強いということになる。

  ※携帯電話等のSAR値一覧(参考)

   http://ktai-denjiha.boo.jp/sar/sar_ichiran.html

  (但し、このHPには電磁波防護グッズのPRがリンクされていますが、防護グッズの効果は不明)

  ※SAR値について

   SAR(Specific Absorption Rate)とは、単位質量の組織に単位時間に吸収されるエネルギー量のこと。2002年6月から総務省令(無線設備規則)によって、人体側頭部のそばで使用する携帯電話端末等に対して、電波防護指針に基づく局所SARの許容値(2W/kg、他国と比べて最も緩い基準)を満たすことが義務づけられました。しかし、この許容値以下だからといって安心できません。

 

    国別 局所SAR値の許容値

 国名

国際機関、国、その他の機関

規制値

測定値基準

日本

総務省

2.0W/kg

頭部(任意)組織10gあたりに吸収される
エネルギー量の平均値(6分間)

米国

FCC(連邦通信委員会)

1.6W/kg

頭部(任意)組織 1g あたりに吸収される
エネルギー量の限界値(他国よりきびしい基準)

韓国

情報通信部

1.6W/kg

米国と同じ基準

ICNIRP

国際非電離放射線防御委員会

2.0W/kg

日本と同じ基準

ドイツ

検討中

0.6W/kg

日本と同じ基準

スウェーデン

スウェーデン事務労働組合連合

0.8W/kg

日本と同じ基準

 

 A携帯電話は電波状況の弱い場合に最大出力となるよう自動調整されるので、電波の弱いところや高速で移動中には使用しない。他者への被曝を防ぐため電車などに乗車中は電源を切る。

 B光と同じように電磁波の強さは距離の2乗に反比例して弱くなるので、できるだけ身体から離して使用する(6センチ離して強さは1/4に)。待ち受け中でも一定間隔で電磁波が出ているので体に密着した衣服ポケットなどに収納しない。就寝中は身体からできるだけ離すか電源を切る。

  電話をかけるときは呼び出し中は身体から離し、通話中も携帯電話をスピーカーホンモードにするか、Bluetooth(ブルートゥース:微少出力の無線)規格のハンズフリーホンを利用して身体から離して使用する(使用時以外は耳からはずす)。いずれの場合も通話は短時間で行う。

   ※Bluetoothハンズフリーホン(2.5mWのクラス2を利用)の価格は数千円程度。

    Bluetoothの電波強度の等級

  等級       電波出力  到達距離

  クラス 1  100mW        100m

 ※クラス 2   2.5mW        10m(ハンズフリーホン等で利用)

  クラス 3     1mW     1m

   有線によるハンズフリーホンの使用は、携帯電話の電磁波が共振しやすい長さである有線部分がアンテナの役割をはたすので頭部から携帯本体を離しても、イヤホン部分での電磁波の強さが弱くならない場合があります。上記「10の予防的手段」ではヘッドセット(ハンズフリーホンの事)使用でも100分の1以下になるとしていますが、疑問あり、有線方式の使用はさけた方がよい。

(3)携帯電話の基地局建設にあたっては住民説明・協議と合意を求めること。

(4)電磁波過敏症の方にとっては、できるだけ電磁波被曝をさけなければならず、特別な対策が必要となる。

(5)携帯電話の他にゲーム機や携帯端末(PDA)、ノートパソコン、無線LAN等の無線内蔵機器、パソコンなどの電磁波発生機器の利用にも注意が必要。

(6)電磁波被曝問題の権限のある第3者機関を設立して安全・予防対策を行うことが必要。

以上